家族の健康を守ろうシリーズ【第五回】

歯周病とアルツハイマ-病の関係

糖尿病進行性と歯周病診断の臨床研究を行っています、白波瀬です。

長い連休のおかげで第5回を寄稿することができました。

 今回は今年1月にアルツハイマ-型認知症(AD)の発症要因として歯周病菌が脳に感染することで発症するという衝撃的で恐ろしい論文がSCIENCE Advanceに掲載されましたので報告します。(詳細は下記リンクを読んでください)

https://advances.sciencemag.org/content/5/1/eaau3333

国内ではほとんどニュ-スにも取り上げられなかったのですが、海外では各メディア、学会の専門家が大きく取り上げていて、歯周病に対する西欧との温度差を感じました。日本人が口腔環境にあまり目を向けていない証拠かもしれません。最近では海外旅行者が増えてきましたが、口臭を持つ日本人の多さにビックリするそうで、混んだ電車、バスに乗りたくない外国人もいるようです。

国内では唯一、羽鳥モーニングショーで日本歯科大特任教授 落合邦康先生(共同研究者)が取り上げただけです。詳細を知りたい方は下記リンクのYoutubeをご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=81-yxcqPcEE

2018年、ADと歯周病の関係について歯周病患者は非歯周病の6倍の発症率になることが既に台湾の大規模研究で報告されていました。6倍という数字はタバコ喫煙者のガン化発症率と同じ比率ですから無視できません。更に今年に入って上記論文が報告されました。この論文によると、AD発症者で死亡した53名の脳を対象として歯周病の出す特殊なプロテア-―ゼを検出したところ、51名に歯周病由来プロテアーゼが高濃度に検出され、脳内神経細胞死の証拠となるタウ蛋白リン酸化量と比例することが報告されました。また、歯周病菌が大脳皮質、脳脊髄液からも検出され、遺伝子検査で口腔内と同じ歯周病菌であることも証明されました。しかも、AD発症しないで死亡した脳にも存在し、その濃度は明らかにAD陽性者よりも低い結果でした。ADが長期間脳内炎症を継続して発症することを考えると、AD発症前に死亡しただけであり、もう少し生存すればADを発症する可能性があったと考えられます。

また、彼らはこのプロテアーゼの特異的な阻害剤を開発し、第1相試験で安全性を終了し、マウスの実験でADの発症を抑制できることに成功し、2019年にはAD患者へ投与する第2相を準備しています。このベンチャ-企業にはタケダ、Pfyzerが資金援助しており、早ければ5年後には製品化されます。

さて、この論文に対する海外メディアの捉え方としては、ADの有効な医薬品開発(アミロイドβの分解、生成抑制)がことごとく失敗して打つ手が無い状況に置いて、光明が見えたとする人とまだまだ臨床研究の第2相を見ないと時期尚早と捉える人と交雑しています。

過去に置いても良く似た事象を経験しました。それはヘリコバクタ-ピロリ菌による胃がん発症です。このときも医療業界はすべて半信半疑でしたが、現在はヘリコバクタ-ピロリ菌の除菌で確実に胃がんが減ってきています。私は歯周病を減らせば30年後にはAD患者数も減っていると確信しています。この論文に否定的な海外メディアも最後には口腔内を清浄に保って定期的なメンテナンス、歯周病巣の治療をしておくことは重要であると伝えています。

以前に無菌マウスはガン化することも無く一生を終えるお話をしましたが、感染症との闘いの結果、ガンだけでなくAD、動脈硬化、脳梗塞、脳卒中、NASHCOPD、肺炎などの発症因子と考えられ、感染性炎症が老化を早めるとも考えられ始めました(炎症老化)。

急性炎症治療だけでなく感染症による慢性炎症(ヘリコバクタ-ピロリ菌、歯周病、虫歯、扁桃腺炎、上咽頭炎、鼻炎、蓄膿など)を放置しないで治療に専念することが、特に老後の健康な生活を維持する上で重要になります。既に遅いと思われている人もあるかもしれませんが、口腔ケアはいつからでも遅くないし、自分で治療のコントロ-ルも可能な疾患です。また、家族の若い世代にも自分の将来の健康をコントロ-ルできる疾患があることを教育してあげてください。

 グラフ.png

 

 

投稿者

シェア: