白波瀬です。長らく投稿が滞ってしまいましたが、第四回は上咽頭ではなく、再々度になりますが口のお話です。皆さんは平静時に口呼吸ができていますか、就寝時はどうでしょうか。今回は口呼吸から起こる恐ろしい話と治し方、特に小学生以下のお孫さんをお持ちの方はじっくりと読んでいただきたいです。

リウマチ、アトピー、ガン患者などの疾患をもつ人は口臭がひどく、疾患を治療していくと口臭も減っていくことはご存知でしょうか。尿臭も同様に異常な臭いを発することから、犬の鼻をセンサーとして尿臭、呼気からガンなどの疾患を診断する方法が報告されています。
医者は口を診ても臭いを嗅ぐ医師はいません。歯医者は口しか診ません。しかし、口呼吸と口臭と慢性疾患が相関することに気づいて積極的に口呼吸を鼻呼吸に変えることに取り組み、薬なしでアトピー性皮膚病、自己免疫疾患等の治療を行っている一部の内科医、歯科医がいます。おそらく鼻呼吸に戻すことはガン化のリスクも低減できていると思われます。
<なぜ口呼吸が悪いのか>
鼻呼吸では外部から侵入する細菌、ウイルスを粘膜上の絨毛、IgAなどを含むムチン(牛の涎と同じ成分で大腸の粘膜にも存在)層でトラップして粘液に包んで胃で消化する防御システムがあります。また鼻腔を冷たい空気が通るだけで30℃以上に温度を上げることができます。生後6か月間までは赤ん坊は口呼吸することはありません。本来人間は鼻呼吸することを前提として創られているのです。一方、口呼吸すると口が乾燥して細菌が繁殖しやすく口内炎、虫歯、扁桃腺炎を繰り返します。また、絨毛のようなフィルターが無いので肺まで細菌、ウイルスを取り込んでしまいます。冬場は冷たい空気がそのまま入り込んで呼吸器系の血流を悪くして免疫が低下して感染症の脅威が大きくなります。こうした呼吸器系の慢性炎症は口蓋の骨の未発達(口蓋が狭い)を引き起こし、風を引きやく、歯列異常(噛み合わない、八重歯など)、虫歯、歯周病、口臭、上唇が富士山形、長顔、蓄膿症、鼻炎、口腔鼻腔狭さくによる虚血、脳の発達障害、ロート胸などを引き起こすといわれています。女性ではブルドッグあご、両目の大きさの異常、厚い唇、腫れ目、梅干あご、口角が下向きなど顔の容姿にまで影響を与えます。口呼吸の人は一生を通じて感染症の戦いで体の免疫機能は疲弊していきます。これが自己免疫疾患、がん化を引き起こしやすい体質を形成していくと考えられます。したがってこのような特徴的な顔が家族に居ないかチェックして鼻呼吸に戻す機会を与えてあげることが我々の役割だと思います。特に子供については二次性徴が始まるまでに鼻呼吸に戻す、ひどい場合は口蓋拡張矯正のために診断を促すことも必要かもしれません。

<どのくらいの人が口呼吸>
最近の日本では6歳までに45%が口呼吸をしていると報告されています。柔らかい食品を食べて咀嚼回数が低下することでも口蓋未発達となり鼻腔が狭くなるために口呼吸に頼ることが口呼吸の比率を上げている可能性もあります。我々世代については口呼吸の調査報告はありません。
<自分で診断できる口呼吸>
自分が口呼吸をしているかどうか分からない人は、安静時に口を閉じたときに舌が上あごにくっついて空間を作っていなければOKです。舌が歯の裏に届いている人、上あごと舌の間に空間がある人は口呼吸をしている証拠になります。就寝時いびきをかく人、のどが渇いて目覚める人、起きた時にのどが痛い人は口呼吸です。さらに、老化に伴う咽口周囲の筋肉の衰えは睡眠時無呼吸症候群へも移行していきます。睡眠時無呼吸は就寝時の血圧上昇が脳(脳出血、認知症)、心臓(心筋梗塞、脳梗塞)、腎臓などの臓器にダメージを与えます。既に口呼吸の人も鼻呼吸に変えることは健康寿命を延ばすためにも是非取り組んでいただきたいと思います。(後述)
<口呼吸にならないために>
赤ん坊は生後6か月間は鼻呼吸をしていますが、指吸から口呼吸しやすくなるので親のケアが大事になります。特にうつぶせ寝をさせないようにしましょう。
子供が食事をとるときに咀嚼回数を多くするように注意を促します。咀嚼回数が多くなる硬い食べ物を与えることも必要です。和食に比べ洋食化も咀嚼回数を低下させる原因です。1回の食事での咀嚼回数は戦前1400回、現在600回という報告もあります。おやつも咀嚼しないと食べられないものを与えます。キシリトールガムは咀嚼回数に優れているだけでなく虫歯にならないし精神的にも優れたおやつと思います。
次回、後編では既に口呼吸の人への対処方法について報告します。11月15日の総会までに掲示しますので宜しくお願いします。
追記:10月23日午後7時からTBS-TVにて「名医のThe太鼓判★口内炎、歯周病、ドライマウス、二重歯列...口の悩みの原因は?」が放送されました。見た方も居られると思いますが芸能人の口のタラブルを持ったゲストが出演して名医が原因と治療方法を応えるものでした。ドライマウスでは口呼吸を指摘したものの、他のトラブルの根本原因も一目で「口呼吸」が原因と分かるのに、名医は誰一人として指摘する人はいませんでした。これが悲しいかな日本の内科医と歯科医の実力と思いました。治療をしても根本が直っていないので口内環境は変わらないので、残念ながらここに出演した芸能人は治療後も感染症との戦いに参加し続けることになります。